| シラバス | - ［授業の方法］
- 講義
- ［受入人数］
- 60
- ［受講対象］
- 自学部他学科生 履修可,他学部生 履修可,科目等履修生 履修可
- ［授業概要］
- 光のもつエネルギーや情報は光励起された物質からの反応によって，さまざまな形で工学的に利用できる。光励起状態からの電子移動やエネルギー移動現象から始まる光化学反応の概念を整理し，フォトレジスト，光記録材料，ディスプレイ材料などの光機能材料の応用例についても解説する。
- ［目的・目標］
- [一般目標] 光や電子線などエネルギーと物質の相互作用で発現する物質の励起状態についてジャブロンスキー図などを用いて理解を深める。特に，この科目では情報材料や画像材料・デバイスへ応用するための材料に用いられる基本的な光化学反応の知識と考え方を身につける。
◆[達成目標１] 光と物質との相互作用と，励起状態からの反応機構や生成する反応中間体を理解し（�｜亮院ν�解），具体的な事例にあてはめて考えることができる。 （�∋弭諭θ獣如� (達成目的１に関連する授業週) ２−７週 (達成目的１の達成度評価方法) 中間試験（重み ４５％）
◆[達成目標２] 典型的な光有機化学反応の事例を分類しながら学び，反応の特徴や高分子科学との関連について整理し（�｜亮院ν�解），さらに画像技術に用いられる光機能材料と光反応とのつながりに興味を持ち（�４愎粥Π嬪漾法� 積極的に光反応の応用について自らの考えを提案できる。（�ぢ崚戞� (達成目的２に関連する授業週) １，８−１５週 (達成目的２の達成度評価方法) 授業レポート（重み １０％），期末試験（重み ４５％）
- ［授業計画・授業内容］
- 産業用画像形成材料である光反応性材料を理解するための基礎的な概念や反応例を中心に解説する。前半は光物理化学の基礎的な項目から反応中間体の特徴を解説し，後半は光反応の応用を見渡しながら典型的な光化学反応例を整理する。画像科学実験III の内容の解説も含まれる。
- [はじめに：光反応化学と応用]―光機能材料が拡げる先端分野―
◇基本的な光反応のプロセスと分類を説明する。◆光反応は現代社会の微細加工や印刷技術などで情報を注入していく生産技術として応用される。また，環境問題への対応や医療技術へも応用が広がっており，光反応化学を学ぶ背景について解説する。■必要な準備学習：光機能材料が応用されている分野と画像や情報，電子産業との関係についてインターネットで調査しておくこと。
- [光の吸収と励起状態]
◇光の吸収と分子構造との関係，分子の励起状態について解説する。◆光の吸収が関連する応用例を紹介する。 ■必要な準備学習：テキスト３章を読んでおくこと。
- [光励起分子からの発光とスピン状態]
◇光励起状態からの緩和現象，光反応の初期過程について解説する。◆エレクトロルミネッセンス（EL）素子やレーザー，ケミルミネッセンスなどの発光現象の応用について紹介する。■必要な準備学習：テキストの５章を読んでおくこと。
- [光反応とスピン：光開裂反応]
◇光励起状態からの結合開裂反応について，電子スピンが関与する多重項状態との関係について解説する。◇演習問題を授業中に行う。◆光ラジカル開始剤について紹介する。■必要な準備学習：テキストの６章を読んでおくこと，また，Moodleにあげる演習問題例を行っておくこと。
- [カルボニル化合物の光化学反応：光開裂反応と水素引き抜き反応]
◇カルボニル化合物の光励起状態からの光開裂反応と水素引き抜き反応について解説する。◇演習問題を授業中に行う。◆光ラジカル開始剤について紹介する。■必要な準備学習：テキストの６章後半を読んでおくこと。また，Moodleにあげる練習問題を解いてくること。
- [光反応のメカニズムと生成する中間体の性質１]
◇光反応の主なメカニズムについて概説し，光反応から生成する反応中間体（カルベン，ナイトレン，ラジカルイオン，ビラジカル，カルボカチオン，カルボアニオン，エノール）とその性質について解説する。◆反応中間体が関与する応用である光発生剤（PXG）について解説する。■必要な準備学習：テキストの７章を読んでおくこと。Moodleにあげる資料を参考にすること。
- [光反応のメカニズムと生成する中間体の性質2]
◇光反応の主なメカニズム（光異性化反応と光付加反応，光転移反応）について概説する。◆反応中間体が関与する応用である光発生剤（PXG）について解説する。■必要な準備学習：テキストの７章を読んでおくこと。この授業中に中間試験を行うので１−７週の講義内容について復習しておくこと。
- [アルケン，アルキンの光反応：光二量化反応]
◇励起状態から直接，生成物が得られる協奏的反応について説明する。◇偏光と分子の配列について考察し，偏光反応について説明する。◆偏光フィルムや光配向膜での応用を紹介する。 ■必要な準備学習：テキスト7章の該当する部分を読んでおくこと。Moodleにあげる資料を参考にすること
- [増感反応：光エネルギー移動]
◇励起状態から励起状態をつくる増感反応，特にエネルギー移動反応について説明する。◆エネルギー移動反応の応用として光劣化の防止について解説する。光安定剤や光吸収剤などの別な機構で光劣化を防止する方法についても化学反応から解説する。 ■必要な準備学習：テキストの１０章を読んでおくこと。
- [分子酸素の光反応]
◇分子酸素が関与する消光反応や一重項酸素からの反応について解説する。◇演習問題を授業中に行う。■必要な準備学習：テキストの１０章を読んでおくこと。Moodleにあげる練習問題を解いてくること。
- [ 増感反応：光誘起電子移動反応]
◇励起状態から励起状態をつくる増感反応，特に電子移動反応について説明する。◇色素系の電子移動反応について例題をしながら説明する。◆電子移動反応の応用について解説する。■必要な準備学習：テキストの１１章を読んでおくこと。
- [ 光誘起電子移動反応と光プロトン移動反応]
◇光電子移動反応と光プロトン移動反応について物理化学的に説明し，基本的な反応設計について解説する。◆電極反応や半導体との共通な考え方について整理する。■必要な準備学習：テキストの１１章を読んでおくこと。
- [光重合反応]
◇重合反応について説明し，光重合反応の特徴について解説する。◆光硬化材料への応用について解説する。 ■必要な準備学習：テキストの８章を読んでおくこと。Moodleにあげる資料を参考にすること。
- [光架橋反応と光脱保護反応]
◇光硬化反応である光架橋反応と光脱保護反応について解説する。◆光硬化材料，リソグラフィー材料への応用について解説する。 ■必要な準備学習：テキストの７章，１２章を読んでおくこと。Moodleにあげる資料を参考にすること。
- [生体の光化学反応]
◇生体における光吸収や光反応について解説する。◆生体における光吸収や光反応について着目し，光化学的療法やその反応について解説し，光に対する安全性についても述べる。 ■必要な準備学習：必要な準備学習：テキストの１４章を読んでおくこと。マイクロデバイスやナノテクノロジーに広がる光反応化学について概観し，技術的課題や発展の方向についてインターネットや図書館の資料などから調査しておくこと。
- [期末試験]
■必要な準備学習：８−１５週の講義内容について復習しておくこと。
- ［キーワード］
- 光化学，光吸収，光反射，光劣化，レーザー，光硬化，光触媒，発光，励起錯体，エネルギー移動，電子移動，ディスプレイ材料，印刷材料，光記録材料，半導体加工
- ［教科書・参考書］
- •先端技術に広がる有機光化学‐つながる光化学と光機能分子材料，高原 茂，開成出版，2013, ISBN978-4-87603-475-6
•また，本授業のMoodleページに講義資料をおく。
[読みやすいもの] •ブルーバックス 光化学の驚異，光化学協会編，講談社，2006, ISBN 4-06-257527-2 •初歩から学ぶ感光性樹脂，池田章彦，水野晶好，工業調査会，2002, ISBN 4-7693-4153-9
[基礎的なもの] •光化学Ｉ，井上晴夫，高木克彦，佐々木政子，朴鐘震，1999，丸善， ISBN 4-621-04656-X •Photochemistry, C. E. Wayne, R. P. Wayne, Oxford University Press, 1996, ISBN 0-19-855886-4 •Modern Molecular Photochemistry, N. J. Turro, University Science Books, 1991, ISBN 0-935702-71-7 •Reactive Intermediate Chemistry, Edited by R. A. Moss, M. S. Platz, M. Jones Jr., John Wiley & Sons, 2004, ISBN 0-471-23324-2 •Introduction to Liquid Crystal, P. J. Collings, M. Hird, Taylor & Francis, 1997, ISBN 0-7484-0483-X [フォトポリマー関連など基礎と応用を含むもの] •Photoinitiators for Free Radical, Cationic and Anionic Photopolymerization, 2nd Edition, J. V. Crivello and K. Dietliker, G. Bradley Ed., Jhon Wiley and Sons, New York (1988), ISBN 0-471-97892-2. •Photoreactive Polymers: The Science and Technology of Resist, Arnost Reiser, Jhon Wiley and Sons, New York (1989), ISBN 0-471-85550-2. •情報記録−化学的アプローチ−日本化学会編，小門 宏，山岡亜夫 著（大日本図書）
［データ集・事典］•Handbook of Photochemistry, Second Edition, Revised and Expanded, S. L. Murov, I. Carmichael, G. L. Hug, Marcel Dekker, 1993, ISBN 0-8247-7911-8. •光応用
技術・材料事典，光応用技術・材料事典編集委員会編，産業技術サービスセンター，2006, ISBN 4-915957-45-4. Molecular Photochemistry", Benjamin-Cummings (1978).
- ［評価方法・基準］
- ◆11/15以上の出席を要する。 ◆課題を出して行う授業レポート：前半の講義内容についての中間試験：後半の講義内容についての期末試験＝１０：４５：４５で合計１００点とする。６０点が本科目の目的・目標に掲げられている達成度に相当するような内容で出題する。 ◆単位を取得するためには，出席条件を満たし，中間試験と期末試験のすべてを受験し，授業レポートを総合した総合点が６０点以上であることが必要である。 ◆中間試験は７回目の授業の中で行う。授業の進展によりいくつかの小テストに分ける場合がある。 ◆期末試験は１６回目の授業で行う。授業の進展によりいくつかの小テストに分ける場合がある。補講・病欠などの追試は補講期間におこなう。 ◆講義中に課題を出して行う授業レポートは１週目および８−１５週に授業に関連ある光化学反応の技術的項目についての「将来予測」を課題とする。技術背景・現状と予測・課題とそのために必要な化学的な進歩について記載され，独自の考えが含まれていること。技術背景と現状：予測：解決すべき課題や必要な材料的な進歩＝３０：３０：３０を標準として考えの緻密なもの，独自性を加点要素として評価する。
- ［関連科目］
- 画像科学実験III
- ［履修要件］
- 原則として，基礎化学A,Bおよび画像化学演習，画像物理化学，画像有機化学を履修済みであること。
- ［備考］
- ［備考］授業の参考資料は千葉大学Moodleにpdfファイルなどでおく。受講者は千葉大学Moodleに登録し，資料をアクセスして入手すること。中間試験や授業レポートの一部は千葉大学Moodleを使って行うことがある。質問や意見等はメールでも受け付ける。
|
|---|